目次
- 雇用保険の適用拡大
- 基本手当の給付制限期間の短縮
- 育児休業給付を支える財政基盤の強化
令和6年5月に雇用保険法の一部を改正する法律が成立しています。実務上影響のありそうな改正項目は、次のようなものになります。
1.雇用保険の適用拡大(令和10年10月1日施行)
雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用拡大されます。最大500万人が新規適用になると見込まれています(令和4年度末時点の被保険者数は約4,457万人)。これにともない、被保険者期間の算定基準が見直されます。被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、それなりに働いた日の期間のことです。基本手当の支給を受けるには、原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上である必要があります。また、賃金日額の下限額も現行の1/2に改正されます。賃金日額の50%から80%が、基本手当日額になり、失業した場合の給付の1日分の単位になります。
2.基本手当の給付制限期間の短縮(令和7年4月1日施行)
自己都合で退職した者については、現状、給付制限期間を原則2カ月としているが、1カ月に短縮されます。ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付制限期間は3カ月となります。
雇用保険法33条
被保険者が自己の責めに帰すべき理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、待期期間の満了後1カ月以上3カ月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、 基本手当を支給しない。
上記の公共職業安定所長の定める期間が、1カ月に変更されます。昔は3カ月でしたが、現在2カ月となっており、さらに令和7年4月から1カ月に短縮されることになります。労働移動に対し中立的な制度にする意図があるようです。
3.育児休業給付を支える財政基盤の強化
令和6年度から、国庫負担割合が現行の1/80から1/8に引き上げられます。本則ではもともと1/8ですが、暫定措置として1/80になっていました。
働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることを踏まえ、雇用のセーフティーネットを拡げる必要からの改正です。週間就業時間が20時間未満の雇用者数が増加していることに対応したものです。セーフティーネットは確かに拡がりますが、給付も低額で細切れになりやすく、事務手続きは増えることにはなりそうです。
改正の詳細については、厚生労働省のこちらのページに記載されています。ご参照ください。