支給事由が生じた保険給付で、請求権者が死亡した場合、その保険給付はどうなるのでしょうか?「未支給の保険給付」について、法律横断的に概観してみます。
目次
- 労働保険系
- 社会保険系
- まとめ
労働保険系
労働者災害補償保険法 | 雇用保険法 | |
対象 | 保険給付(法11条) | 失業等給付、育児休業給付 |
請求 | 1 自己の名で行うことができる 2 同順位者が2人以上いるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額についてしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす | 1 自己の名で行うことができる 2 同順位者が2人以上いるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額についてしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす |
請求権者 | イ 遺族(補償)等年金以外 受給権者の死亡の当時、その者と生計を同じくしていた 1 配偶者(事実婚を含む) 2 子 3 父母 4 孫 5 祖父母 6 兄弟姉妹 ロ 遺族(補償)等年金 同順位者がいる場合には同順位者、同順位者がいない場合には自順位者 | 受給権者の死亡の当時、その者と生計を同じくしていた 1 配偶者 2 子 3 父母 4 孫 5 祖父母 6 兄弟姉妹 |
その他 | 未支給の保険給付とは 1 支給事由が生じた保険給付であって、まだ請求されていないもの 2 請求をしたが、まだ支給決定がないもの 3 支給決定はあったが、まだ支払われていないもの | ※受給資格者等が死亡したため失業の認定を受けることができなかった期間に係る基本手当等の支給を請求する者は、当該受給資格者等について失業の認定を受けなければならない(法31条ほか) ※受給資格者等が死亡した日の翌日から起算して6箇月以内に請求しなければならない(則17条の2) |
雇用保険については、死亡日から6箇月以内に請求する必要があります。
社会保険系
国民年金法 ※脱退一時金についても対象となる(法附則9条の3の2第7項) | 厚生年金保険法 | |
対象 | 年金給付 | 保険給付 |
請求 | 1 自己の名で行うことができる 2 同順位者が2人以上いるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額についてしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす | 1 自己の名で行うことができる 2 同順位者が2人以上いるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額についてしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす |
請求権者 | 受給権者の死亡の当時、その者と生計を同じくしていた 1 配偶者 2 子 3 父母 4 孫 5 祖父母 6 兄弟姉妹 7 3親等内の親族(1~6以外) | 受給権者の死亡の当時、その者と生計を同じくしていた 1 配偶者 2 子 3 父母 4 孫 5 祖父母 6 兄弟姉妹 7 3親等内の親族(1~6以外) |
その他 | ※ 死亡した受給権者が死亡前に裁定請求していなかった場合でも、上記の者は、自己の名で請求することができる ※ 受給権者の子でないものであっても、一定の場合は子とみなして未支給年金または未支給の給付を請求できる | ※ 死亡した受給権者が死亡前に裁定請求していなかった場合でも、上記の者は、自己の名で請求することができる ※ 受給権者の子でないものであっても、一定の場合は子とみなして未支給年金または未支給の給付を請求できる |
まとめ
健康保険法には未支給規定は置かれていません。死亡者の相続人が請求権者となります。
また、老齢年金については、後払いという仕組み上、必ず未支給年金が発生します。自分の配偶者や親等で関係してくる可能性がありますので、知っておきたいです。