給与計算上の通勤手当と旅費交通費の考え方について

目次

  1. 通勤手当は賃金
  2. 旅費交通費は実費弁償
  3. 就業規則や賃金規程の通勤手当の規程例

通勤手当と旅費交通費はどう違うのでしょうか。

どちらも実費弁償のように見えますが、そうではありません。

通勤手当は賃金

賃金とは、労働の対象として使用者が労働者に支払うすべてのものを言います。

つまり、労働の対象でないものは賃金ではありません。

通勤手当は所得税の課税対象とならないことから、賃金でないと考える方もいらっしゃいますが、正しい理解ではありません。

本来、会社への出勤費用は、従業員が準備するのが労働契約上の原則です。

これを労働条件として会社が負担するのですから、賃金に該当します。

次に実費弁償かどうかについてです。

会社までの通勤費は本来、従業員が負担すべきものです。

これを会社が賃金として,つまり労働の対象として支給しているのであり、実費弁償ではありません。

通勤手当を実費弁償として支給するとしている就業規則例もありますが、正しい記載ではありません。

通勤手当は実費弁償ではありませんので、受領後に従業員がそれを何に使うかは自由です。

例えば、1ヶ月分の通勤手当で6ヶ月定期を買っても、何の後ろめたさを感じる必要も本来ありません。

したがって、通勤定期券などの現物で通勤手当を支払うことは原則禁止されており、現物支給を行うためには労働組合との労働協約の締結が必要です。

この労働協約は労使協定での代替えは認められていません。

言い換えると、労働組合のない会社では通勤手当の支払いに変えて通勤定期券を現物支給することは例外なく違法となります。

旅費交通費は実費弁償

それに対し、旅費交通費は、労働者がその職務の遂行上、当然必要と認められる費用を負担する場合に使用者がこれを補填するものです。

使用者が負担すべき費用を実費弁償することに当たりますので、旅費交通費は賃金ではありません。

よって、旅費規定等に定める出張手当、交通費は本来会社が負担すべき実費弁償的な金銭であり、基本的に賃金ではありません。

賃金ではないので、社会保険料の算定の基礎となる賃金から旅費交通費は除かれることになります。

それに対し、通勤手当は賃金ですので、社会保険料の算定の基礎となる賃金に含めます。

補足ですが、労働保険では賃金という言葉を使いますが、健康保険・厚生年金では報酬という言葉を使います。

就業規則や賃金規程の通勤手当の規程例

例えば上記のような規定例が考えられます。

通勤手当の対象となる通勤経路は、最も合理的、かつ経済的であると会社が見なしたものに限ることを規定しましょう。

また、通勤手当の上限額も規定で定めるべきでしょう。

その額は任意ですが、所得税の非課税限度額の範囲内とすることが多いと思われます。

非課税限度額については下記のサイトで確認できます。

国税庁HP https://www.nta.go.jp/users/gensen/tsukin/index2.htm

民間統計調査の結果によると、通勤手当の上限限度額は5万円台としている会社が最も多いようです。

補足ですが、通勤手当を(ガソリン単価 × 通勤距離)で支給している場合に、ガソリン単価を変更した場合は、社会保険の月額変更届の対象となる固定的賃金の変動に該当します。

今回は、 給与計算上の通勤手当と旅費交通費の考え方について 書きました。

以外に誤解しやすい事項かもしれません。

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