労働保険の賃金と社会保険の報酬の違い

目次

  1. 労働保険の賃金とは
  2. 社会保険の報酬とは
  3. 労働保険の賃金と社会保険の報酬の違い

今回は、 労働保険の賃金と社会保険の報酬の違い について書きます。実務上も知っておいて損はありません。ここでは、健康保険と厚生年金保険のことを社会保険と呼びます。

労働保険の賃金とは

労働保険とは、労働者災害補償保険と雇用保険の総称です。

賃金については、ともに労働基準法をベースにしており、労働者の保護の対象にすべきもの、という考え方です。これは労働基準法が労働者保護法として作られた法律であることからきています。労働基準法は昭和22年に制定され、労働条件に関する最低基準を定めています。

したがって、

任意恩恵的なもの(ただし、就業規則等で支給条件が明確なものは賃金)、

福利厚生的なもの、

実費弁償的なもの、

は保護の対象としなくてもいいよね、ということで労働保険の賃金から除外されています。また、法人の代表者は雇用保険の被保険者にならないし、法人の代表者の給与に賃金という言葉を使いません。労働者災害補償保険もその名の通リ、原則として労働者の負傷、疾病、傷害、死亡等に対して保護をするため、必要な保険給付等を行うことが目的です。

また、退職者が出たときにハローワークへ提出する『雇用保険被保険者離職証明書』の賃金額の欄に記載する賃金は、その賃金支払対象期間に支払い義務が確定した賃金です。実際に支給された賃金ではありません。

よって、実際に支払われていなくても「未払賃金」と備考欄に記載して、その対象期間の賃金を記載します。

社会保険の報酬とは

これに対し、社会保険の報酬には、保護の対象にすべきもの、という考えはありません。法人の社長が法人から給与の支給を受ければ、それは報酬となります。また、実際に支払われたものを報酬と呼びます。

基本的に月単位で考えます。したがって、給与締め日に関係なく、その月に支給された給与がその月の報酬となります。支払われていない給与からは、保険料を控除できないから、と考えると分かりやすいです。

健康保険法は、大正11年に制定された法律です。その当時は、今のようにパソコンもない時代です。計算しやすいように、原則として、一定の範囲内の報酬を、標準報酬という一定の金額に1年間固定させました。

たとえば、63,000円以上73,000円未満を68,000円と決めつけて、それをもとに保険料や保険給付を計算します。その仕組みが今でも続いています。

労働保険の賃金と社会保険の報酬の違い

給与、給料、賃金、報酬、謝金、等の言葉は、あまり意識して使い分けされていないと思いますし、日常生活上はとくに困らないかと思います。しかし、法律上、労働保険の賃金と健康保険の報酬は、‘’保護の対象とすべきもの‘’という考えがあるのか、ないのか、という点で異なっています。給与計算に携わる方はちろんですが、そうでない方も押さえておくと理解の助けになります。