子のない配偶者の遺族厚生年金の見直し

  1. 遺族厚生年金の改正
  2. 中高齢寡婦加算とは
  3. 見直しの方向性

遺族厚生年金の改正

まず、現行制度ですが、

夫が亡くなった場合は、

・妻が30歳未満なら5年間の受給

・妻が30歳以上なら生涯受給

妻が亡くなった場合は、

夫が55歳以上でないと受給権はなく、実際の受給は60歳から

でした。下図のようなイメージです。

出典 厚生労働省 遺族年金制度の見直しについて chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001281516.pdf

※1 再婚等の事情により失権する場合がある。
※2 40歳時点で子がいるため遺族基礎年金を受給していた妻は、子が一定の年齢となり持続基礎年金を受給できなくなったときから加算される。
※3 夫は55歳から59歳までは支給停止。ただし、遺族基礎年金の受給権を有する場合は、支給停止は行わない。

夫が働いて妻が家族を支える家計を前提としていたようです。専業主婦の世帯数を共働きの世帯数が上回っている今の時代に合っていないのではないか、ということで改正に至ったようです。その背景については、納得感はあります。

中高齢寡婦加算とは

子がいない妻(遺族基礎年金を受けられない妻)が受給する遺族厚生年金の額は、子がいる妻(遺族基礎年金を受けられる妻)と比較して相当に低くなります。厚生年金では、その格差を是正するために、子がいない妻に対して「中高齢寡婦加算」を加算しています。中高齢寡婦加算の要件は以下の通りです。

夫の要件長期要件厚生年金の被保険者期間が20年以上(中高齢の特例の場合は15~19年)以上あること
夫の要件短期要件要件なし
妻の要件原則夫が死亡した当時、40歳以上65歳未満で遺族基礎年金が支給されていないこと
妻の要件子のある妻限定夫死亡時に遺族基礎年金を受けていたが、子が18歳到達年度末(又は障害のある子が20歳に到達)になり遺族基礎年金が失権した時点で40歳以上65歳未満であること

中高齢寡婦加算の額は、遺族基礎年金の基本額の4分の3です。令和6年度の場合、612,000円(年額)となります。

見直しの方向性

見直しの方向性としては

  • 男女差の解消:40歳(※4)未満の子のない配偶者には原則5年の有期給付
  • 配慮の必要な方には65歳まで給付を継続

※4 20年かけて60歳未満に引上げ

となりました。配慮が必要な方に対する5年目以降の継続給付ですが、障害の状態の有無や前年所得に基づく支給調整を行う案とされました。

以下の配慮措置もあるようです。

  • 現行の遺族厚生年金額よりも有期給付加算で年金額を増額
  • 婚姻期間中の厚生年金加入記録を分割することにより遺族の老齢年金を充実
  • 収入にかかわらず受給可能に

また、現在の受給者や高齢の方、18歳未満の子のある配偶者には現在の給付を継続するようです。そこは心配しなくてよさそうです。

遺族年金は終活にも関係するかもしれません。今後も注目しておきたいです。