派遣と出向はどう違うのか?労働者供給との関係は?

派遣と出向の違いについて聞かれました。

どう違うのか、整理してみます。

目次

  1. 派遣と出向の違いについて
  2. 労働者供給とは
  3. 派遣には許可が必要

派遣と出向の違いについて

厚生労働省 資料 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0229-5d.pdf
厚生労働省 資料 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0229-5d.pdf

まず、言葉の定義から見ていきます。

労働者派遣法により労働者派遣とは次のように定められています。

自己の雇用する労働者を、雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、他人のために労働に従事させることをいい、他人に対し労働者を他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

これに対し、出向に関しては、次のような資料があります。

いわゆる出向は、出向元事業主と何らかの関係を保ちながら、出向先事業主との間において新たな雇用契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態である。

厚生労働省 資料 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0229-5d.pdf

実際に働いている事業主と労働者の間に雇用関係があるかどうかがポイントになります。

つまり、その労働の対価としてのお給料を労働者はどの事業主から受け取っているかということです。

Aという会社に在籍はしているが、Bという会社で働いている場合、労働者がBという会社からお給料を受けていて、Aという会社からはお給料を受けていないということであれば、それは派遣ではないということになります。

労働者供給とは

似たようなものに労働者供給というものがあります。

これについては、職業安定法で次のように定義されています。

労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。

厚生労働省の資料によると、在籍型出向の形態は、労働者供給に該当するので、その在籍型出向が「業として行われる」場合には、職業安定法44条より禁止される労働者供給事業に該当するとしています。

労働者供給が許されるのは、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けた場合に限られており、原則禁止とされています。

しかし、在籍型出向のうち、

1 労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する

2 経営指導、技術指導の実施

3 職業能力開発の一環として行う

4 企業グループ内の人事交流の一環として行う

等の目的を有しているものについては、出向が行為として形式的に繰り返し行われたとしても、社会通念上「業として行われている」と判断しうるものは少ないと考えているようです。

しかし、上記の1から4に該当しない場合、「業として行われている」と判断される可能性があり、その場合違法となることには注意が必要です。

その根拠は、次の労働基準法6条の条文です。

何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

労働基準法6条 中間搾取の排除

労働基準法っていい法律です。

「法律に基づいて許される場合」とか、「業として」という例外はありますが、この条文がなかったら、弱肉強食の暗黒世界のような気がします。

派遣には許可が必要

まず、派遣が禁止されている業務があります。

それは建設の業務、港湾運送の業務、警備の業務、その他政令で定める業務(医業等の業務)です。

ただし、医業等の業務については、例外的に派遣を行うことができるものがあります。

そして、労働者派遣を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。

許可の有効期間は許可の日から起算して3年です。

ただし、更新を受けた場合の許可の有効期間は、有効期間が満了する日の翌日から起算して5年です。

労働基準法などは労働者と労働契約関係にある事業に適用されるので、派遣労働者に関しては、派遣労働者と労働契約関係にある派遣元事業主が責任を負い、これと労働契約関係にない派遣先事業主は責任を負わないことになります。

しかし、派遣法により特例規定が設けられており、派遣先事業主にも使用者責任があります。

これに対し、在籍型出向の場合は、出向元、出向先それぞれ労働契約が存する限度で使用者責任を負います。

今回は、「派遣」と「出向」の違いについて書きました。

「在籍型出向」は、労働者供給だけれども一定の目的を有していれば違法となるものは少ない。

「派遣」は、職業安定法の労働者供給の定義には当てはまらず違法ではない、
ということです。

なかなか複雑です。

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