死亡または4日以上の休業で注文者等に報告義務(安全衛生規則の一部改正)

厚生労働省は9月5日、労働安全衛生規則の一部を改正する省令案を労働政策審議会安全衛生分科会に諮問し、答申を得ました。

11月を目途に交付し、令和9年1月1日から施工します。

個人事業主等の業務上災害の報告制度創設に向けたものです。

目次

  1. 注文者または管理事業者に報告義務
  2. 個人事業者は報告主体に災害状況等を報告
  3. 脳心臓疾患や精神障害については個人事業者自身が直接報告

注文者または管理事業者に報告義務

個人事業主等の業務上災害については、現在、網羅的に把握する仕組みはありませんでした。

個人事業者は、労働保険法上の労働者とはされず、原則労災が使えません。

つまり、災害が起きても労働基準監督署も把握しきれていないということです。

業務上災害を防止するためにも、実態の把握が求められていたようです。

個人事業者等の業務上災害の報告制度創設を念頭に、労働安全衛生法第100条の2第2項に次のように規定しました。

「厚生労働大臣は、調査のために必要なときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業を行う者及び作業従事者に対し、必要な事項を報告させることができる。」

個人事業者等が労働者と同一の場所における就業に伴う事故等により死亡または休業(4日以上)した場合には、所轄労働基準監督署が情報を把握できるよう、関係者に災害後遅滞なく必要事項の報告を義務付けます。

この関係者とは、災害発生現場における直近上位の注文者(特定注文者)が該当しますが、特定注文者が災害発生場所にいない場合は、災害発生場所を管理する事業者(災害発生場所管理事業者)が報告主体となります。

報告義務違反に罰則はありません。

個人事業者は報告主体に災害状況等を報告

個人事業者が災害発生の事実を報告することが可能な場合には、個人事業者は報告主体に対して、業務上災害の発生状況や原因等について遅滞なく報告しなければなりません。

報告を受けた報告主体は、その内容を踏まえ、必要事項を補足した上で所轄労働基準監督署長に遅滞なく報告します。

個人事業者 → 報告主体(注文者又は管理事業者) → 所轄労働基準監督署

なお、報告主体は、個人事業者が業務上災害の報告を行ったことを理由として、個人事業者に対し不利益取扱いを行ってはなりません。

中小企業の事業主や役員の業務上災害については、上記にかかわらず、所属企業が所轄労働基準監督署に遅滞なく報告する義務を負います。

脳・心臓疾患や精神障害については個人事業者自身が直接報告

個人事業者の脳・心臓疾患及び精神障害事案については、個人事業者が直接所轄労働基準監督署に報告することとされます。

個人事業者 → 所轄労働基準監督署

中小企業の事業主や役員の場合は同様に、所属企業が報告します。

労働者死傷病報告は電子申請が義務化されていることから、個人事業者等の業務上災害の報告制度についても電子申請が原則とされます。

しかし、経過措置として当分の間、電子申請によることが困難な場合は、紙媒体での報告を認める旨を規定します。

この当分の間というのはいつまでなのかを2025年の春に労災課の人に聞いたことがありますが、その時の返事は、「決まっていません。」ということでした。

労災については、労災保険料が上がってしまうかも、という理由や労災を契機として労働基準監督署の調査が入るかもしれないなどの理由により、事業主側としてはなかったことにしたいという力が働きます。

実際以前働いていた会社でも治療費を払うから労災保険は使わないように従業員に依頼した事例を知っています。

今回の改正は個人事業者等の業務上災害ですので、労災保険とは直接関係がなさそうです。

この制度が機能して、業務上災害の防止に役立つことを願います。

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