今回は、適用事業報告についてです。
目次
- 概要と提出義務
- 提出が必要なケース、不要なケース
- 記入時に間違いやすいポイント
概要と提出義務
適用事業報告とは、労働基準法の適用を受ける事業所となったときに、事業開始後遅滞なく、提出するものです。業種は問いません。労働基準法は、1人でも労働者を雇えば適用になりますので、労働者を使用するに至ったときに提出します。
労働基準監督署が事業所の状況を把握する役割を果たします。
個人事業主でも、労働者を雇用した場合は提出義務があります。また、労働者には正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。一方で、取締役や役員、フリーランス、建設業における一人親方は労働者として扱われません。
労働基準法における適用事業とは
労働基準法の適用事業の適用単位については以下の行政解釈があります。
適用単位について(昭和33.2.13基発90号)
- 事業とは、工場、鉱山、事務所、店舗等の如く一定の場所において、相関連する組織ものとに業として継続的に行われる作業の一体をいうのであって、必ずしもいわゆる経営上一体をなす支店、工場等を総合した全事業を指称するものではないこと。
- 従って一の事業であるか否かは主として場所的観念によって決定すべきもので、同一の場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とすること
- しかし、同一場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門が存する場合に、その部門が主たる部門との関連において、従事労働者・労務管理等が明確に区分され、かつ、主たる部門と切り離して適用を定めることによって、法がより適切に運用できる場合には、その部門を一の独立の事業とすること。たとえば、工場内の診療所、食堂等の如きはこれに該当すること。
- また、場所的に分散しているものであっても、出張所、支所等で、規模が著しく小さく、組織関連ないし事務能力等を勘案して一の事業という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一の事業として取り扱うこと。例えば、新聞社の通信部の如きはこれに該当すること。
労働基準法に基づく報告または届出(平7.12.26基発740号)
同一企業が複数の事業場を有する場合であって、同一の労働基準監督署管内に2以上の事業場があるときは、各事業場に係る労働基準法に基づく報告又は届出ついては、当該企業内の組織上、各事業場の長より上位の使用者が、とりまとめて当該労働基準監督署に報告又は届出を行うことは差し支えないこと。その場合においては、各事業場ごとに、報告又は届出の内容を明らかにし、また、各事業場に係る内容が同一であればその旨を明らかにした上で、報告又は届出を行うこと。
提出が必要なケース、不要なケース
労働基準法に基づく36協定や適用事業報告は事業場ごとに所轄労働基準監督署に届出・報告する必要があります。建設現場においては、「現場事務所があって、当該現場において労務管理が一体として行われている場合を除き、直近上位の機構に一括して適用すること」とされており、上記に該当する場合を除いて基本的に現場ごとの届け出・報告は不要となっています。
具体例は、以下のようになります。

記入時に間違いやすいポイント

まず、提出先ですが、事業場を管轄する労働基準監督署となります。
本店や支店を管轄する労基署とは異なる場合があります。
添付書類は特に不要です。
労働者数については、正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれますが、取締役などの役員、一人親方などは労働者にあたらないため含まれません。
備考欄の適用年月日は、最初の従業員を雇用した日を記載します。
工事現場が事業場となる場合などで会社の設立日や事業所の開設日とは異なる可能性があります。
事業主の押印は不要となっています。
適用事業所の控えを作成しておきましょう
適用事業所の提出をする際は、控えを作成しておくと安心です。
労働基準監督署の指導監査時に適正に手続を行っている証明になりますし、取引先から事業報告書の控えを求められることがあります。
控えの作成方法ですが、まず、作成した適用事業所のコピーを作成し、余白に控えと記載します。届出の際に控えも一緒に提出すれば、労基署の担当者が控えに受付印を押して返却してくれます。これを保管します。
今回は、適用事業報告というあまり聞きなれない報告書について書きました。
人を雇ったら、忘れずに届出しましょう。