法定三帳簿とは何でしょうか。
タイトルで言ってしまっていますが、 法定三帳簿とは 労働者名簿と賃金台帳と出勤簿 のことを指します。これに有給休暇管理簿を足して、法定四帳簿と呼ぶこともあります。
いずれについても、労働者を雇用する事業者は、作成と保存の義務があります。
また、年次有給休暇管理簿を除き、規程に違反した場合には罰則が適用されることがあります。
目次
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
労働者名簿
(労働者名簿)
引用 法令検索e-gov 労働基準法 第107条
第百七条 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
② 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
上の履歴とは職歴のことです。厚生労働省で定める事項とは、以下の通りです。
(厚生労働省で定める事項)
1. 労働者名簿に記入しなければならない事項は、法107条1項に規定するもの(労働者の氏名、生年月日、履歴)のほか、次に掲げるものとする。
(a) 性別
(b) 住所
(c) 従事する業務の種類
(d) 雇入の年月日
(e) 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)
(f) 死亡の年月日及びその原因2. 常時30人未満の労働者を使用する事業においては、1.(c)に掲げる事項(従事する業務の種類)を記入することを要しない。
労働者名簿は、事業の種類や規模に関係なく、日日雇入れられる労働者以外のすべての労働者について作成義務があります。ただし、常時30人未満の労働者を使用する事業にあっては、「従事する業務の種類」については、作成義務はありません。小規模の会社では、複数の業務を兼務することも多いからです。
賃金台帳
(賃金台帳)
引用 法令検索e-gov 労働基準法 第108条
第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
(厚生労働省令で定める事項)
1. 使用者は、法108条の規程によって、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。
(a) 氏名
(b) 性別
(c) 賃金計算期間
(d) 労働日数
(e) 労働時間数
(f) 法33条[災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等]若しくは法36条[時間外・休日労働]の規程によって労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後10時から午前5時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は時間については午後11時から午前6時)までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
(g) 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
(h) 法24条1項の規定によって賃金の一部を控除した場合には、その額2. 1.(f)の労働時間数は当該事業場の就業規則において法の規程に異なる所定労働時間又は休日の定めをした場合には、その就業規則に基づいて算定する労働時間数をもってこれに代えることができる。
3. 1.(g)の賃金の種類中に通貨以外のもので支払われる賃金がある場合には、その評価総額を記入しなければならない。
4. 日日雇入れられるも者(1カ月を超えてひきつづき使用される者を除く。) については、1.(c)は記入するを要しない。
5. 法41条に該当する労働者及び法41条の2第1項の規定により労働させる労働者については、1.(e)及び(f)は、これを記入することを要しない。
上記の法41条該当者とは、労働時間等の規程の適用を受けない管理監督者等のことです。しかし、法41条該当者であっても、行政解釈(昭和23.2.3基発161号)により、「深夜労働時間数」は賃金台帳に記入するように指導がなされています。
また、行政解釈(昭和23.11.2基収3815号)により、年次有給休暇の期間は、通常労働時間労働したものとみなし、その日数、時間については、労働日数欄、労働時間数欄に記入します。
留意点をいくつかあげます。
まず、高度プロフェッショナル制度の規程により労働させる労働者については、「労働時間」及び「時間外・休日労働時間数、深夜労働時間数」の記入は要しません。
次に、使用者は、年次有給休暇管理簿、労働者名簿又は賃金台帳をあわせて調整することができます。たとえば、賃金台帳に労働者名簿で定められた事項も記載されていれば、労働者名簿の作成義務も果たしたことになります。
必ずしも個別に作成する必要はない、ということは知っておきたいポイントです。これに関して、以下のような通達が出されています。
派遣労働者の労働者名簿、賃金台帳の調製について(昭和61.6.6基発333号)
労働者名簿、賃金台帳及び労働者派遣法37条の派遣元管理台帳については、法令上記載しなければならない事項が具備されていれば、必ずしも別個に作成しなければならないものではなく、労働者名簿等を合わせて一つの台帳を作成することも差支えありません。なお、派遣元の使用者は、労働者派遣法42条に基づき派遣先から通知された事項により、賃金台帳に必要事項を記載するものとされています。
出勤簿
従業員の勤怠管理正と正確な給与計算のために作成します。出勤簿の書式には法的な取り決めはありません。一般的には、
出勤日、労働日数
日別の労働時間数と始業・終業時刻、休憩時間
時間外労働を行った日付と始業・終業時刻、時間数
休日労働を行った日付と始業・終業時刻、時間数
22時から翌5時までの深夜労働した日付と始業・終業時刻、時間数
勤務時間(拘束時間)
所定労働時間
法定労働時間
法定内残業時間
等を記載します。