労働協約と労働契約と就業規則

 労働協約と労働契約と就業規則 の違い、その関係性について書きます。

目次

  1. 労働協約、労働契約とは
  2. 就業規則とは
  3. それぞれの関係性

労働協約、労働契約とは

労働協約

労働協約と労働契約は、字が似ていますが違うものです。

労働協約とは、労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する取り決めです。
したがって、労働組合がある会社にしか、労働協約は存在しません。労働組合の組織率は、長期的に見て低下傾向にあり、現在10数パーセントです。
書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名捺印することによってその効力が生じます。

現物給与をするには労働協約が必要です。
現物給与とは、たとえば、通勤定期券を現物で支給するといったことです。
したがって、労働組合がない会社が通勤定期券を現物支給した場合、
それは違法ということになります。

労働契約

労働契約とは、会社と個別の社員との契約です。

通常は入社時に会社と労働者が取り交わします。必ずしも書面で取り交わすことまでは必要とされておらず、口頭でも契約は有効とされています。ただし、労働条件は明示義務があります。労働条件通知書という名前にして、署名捺印し、労働契約と兼ねている会社もあります。令和6年4月に労働条件の明示事項の改正がありました。

契約によって、労働者は労働する義務を負い、
会社はその労働に対して賃金支払いの義務を負います。

就業規則とは

就業規則は、会社のルールを定めたものです。
労働基準監督署に提出の際は、労働者代表の意見書を添付する必要がありますが、原則として会社側が自由に決められます。

労働者に周知されていることが前提ですが、法的規範を持つとされています。
法的規範とは、争いが起こって裁判になった場合は、就業規則は法律的な判断要素になるということです。

10人以上従業員のいる会社は、作成して労働基準監督署に届け出る必要があります。法律上の届け出義務を果たすためだけに、就業規則を作成している会社も少なくないですが、それはもったいないです。1人でも労働者を雇ったら、就業規則を作成して、事業場内に明示すべきだと思います。労使間のトラブルを避けるためでもあり、会社を守るためでもあります。

それぞれの関係性

それぞれの優先順位(法源としての序列)は、

労働協約>就業規則>労働契約

となります。
たとえば、就業規則に1日7時間労働、労働契約に1日8時間労働と記載されていた場合、1日7時間労働になります。

ただし、労働契約が1日6時間労働と記載されていると、この場合は、労働契約が優先され1日6時間労働となります。
1日6時間の方が労働者にとって有利だからです。
労働契約のほうが就業規則より有利な場合は、その部文のみ労働契約が無効となり、その他の部分は有効です。

全部を無効にすると、契約そのものがなくなってしまい、労働者に不利になってしまうからです。
これを部分無効自動引上げと言います。

さらに、労働協約で1日5時間労働と決めると1日5時間になります。
基本的に会社が自由に決められる就業規則より、労使の合意により決まる労働協約のほうが優先します。

ただし、労働協約、就業規則、労働契約ともに労働基準法に達しない労働条件の部分は無効になります。

達しない労働条件の部分は、労働基準法の労働条件まで引き上げられます。
労働基準法は、労働条件の最低条件を定めた法律だからです。労働基準法が労働者保護法といわれる理由です。

たとえば、原則的な労働時間制を採用している会社の場合、1日9時間労働と労働契約書に記載して採用して働かせても、1日9時間の部分は、1日8時間と読み替えられることになります。雇用契約自体は無効になりません。雇用契約自体を無効にしてしまうと、賃金を受け取れなくなる恐れがあるからです。
図で表すと、こんなイメージです。