年金制度改革が2025年6月に成立しました。その中身について見ていきます。
目次
- 遺族年金の見直し
- 中高齢寡婦加算とは
- 「標準報酬月額」の上限引き上げ

遺族年金の見直し
遺族厚生年金における支給要件や給付内容を改正
遺族厚生年金を、女性の就業率上昇等の社会変化に合わせ、男女問わず受給しやすくするようです。
- 男女ともに受給しやすくし、原則5年の有期給付に
- 低所得など配慮が必要な方は最長65歳まで所得に応じた給付の継続
- 有期給付の場合の加算や配偶者の加入記録による自身の年金の増額
- 女性のみの加算を廃止(25年かけて段階的に縮小)
※ すでに受給権を有する方、60歳以降の方、20代から50代の18歳未満の子のある方、については、今回の改正の影響を受けません。

遺族基礎年金における支給要件を改正
子に対する遺族基礎年金が、子ども自らの選択によらない事情により、支給停止されないようにします。
被保険者死亡以降の配偶者や子の状態 | 子に対する遺族基礎年金 |
---|---|
配偶者が子の生計を維持し、死別後に再婚 | 支給停止⇨新たに支給 |
死亡者の生計維持関係の確認に用いる収入基準(850万円)を超える配偶者が子の生計を維持 | 支給停止⇨新たに支給 |
直系血族(又は直系姻族)の養子となる | 支給停止⇨新たに支給 |
(生前に既に離別しており、)子の生計を維持していた被保険者が死亡した後、元配偶者が子を引き取る | 支給停止⇨新たに支給 |
※ 上記の事例はすべて、配偶者が遺族基礎年金を受けられないこと等により、子が遺族基礎年金を受給できる可能性がある。
遺族厚生年金については、令和10年4月1日施行予定です。
遺族厚生年金の額は、原則として、老齢厚生年金の額の4分の3です。老齢厚生年金の額の4分の1の額を遺族厚生年金の有期給付加算として考えているようです。
また、中高齢寡婦加算については段階的に廃止されます。
上の「・女性のみの加算を廃止(25年かけて段階的に縮小)」というのは、中高齢寡婦加算の廃止のことです。
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、併給されるのが原則ですが、遺族厚生年金は妻1人であっても支給されるのに対し、遺族基礎年金は子のある妻でなければ支給されません。そこで遺族基礎年金が支給されない場合に中高齢寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます。金額も遺族基礎年金の4分の3であり、中高齢寡婦加算の廃止は、影響が大きいように感じます。令和7年度の遺族厚生年金の中高齢寡婦加算の額は、623,800円/年額です。
中高齢寡婦加算とは
中高齢寡婦加算は遺族厚生年金の受給権者である妻に支給される年金です。
遺族基礎年金の代わりに支給される年金というイメージです。中高齢寡加算が支給される妻は、以下の通りです。
- 子がない場合には、夫の死亡当時40歳以上65歳未満であること
- 子がある場合には、夫の死亡当時40歳未満であっても、その子の遺族基礎年金の受給権が消滅したときに40歳以上65歳未満であること


なお、長期要件により、妻が遺族厚生年金の支給を受けるときは、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が、20年以上必要です。短期要件の時はこのような要件は必要とされていません。
「標準報酬月額」の上限引き上げ
負担能力に応じた負担を求める観点や給付水準全体にプラスの効果をもたらす所得再分配機能の強化の観点から新たな等級が追加されます。
標準報酬月額を65万円から75万円に3年間かけて段階的に引き上げます。
※実施時期 68万円(2027年9月)
71万円(2028年9月)
75万円(2029年9月)
健康保険等級 | 厚生年金保険等級 | 標準報酬月額 |
---|---|---|
1 | 58,000 | |
・・・ | ・・・ | ・・・ |
4 | 1 | 88,000 |
5 | 2 | 98,000 |
・・・ | ・・・ | ・・・ |
35 | 32 | 650,000 |
36 | 33 | 680,000 |
37 | 34 | 710,000 |
38 | 35 | 750,000 |
39 | 790,000 | |
・・・ | ・・・ | |
50 | 1,390,000 |
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