年金制度改正法が2025年6月13日に成立

年金制度改正法が2025年6月13日に成立 しました。改正法は、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」と言います。長いですね。第217回通常国会に提出され、衆議院で修正のうえ、6月13日に成立しました。法律の中身について見ていきます。

  1. 全体像
  2. 被用者保険の適用拡大
  3. 在職老齢年金制度の見直し

全体像

年金制度改正の概要

  1. 働き方に中立的で、ライフスタイルの多様化等を踏まえた制度を構築するとともに、高齢期における生活の安定及び所得再配分機能の強化を図るための公的年金制度の見直し
    ・被用者保険の適用拡大
    ・在職老齢年金制度の見直し
    ・遺族年金の見直し
    ・厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的見直し
    ・将来の基礎年金の給付水準の底上げ
  2. 私的年金制度の見直し
  3. その他

上記のような制度の概要となっています。詳しくは、厚生労働省のホームページ

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

をご参照ください。

厚生労働省HPより https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

1 公的年金制度の見直しの中の「・将来の基礎年金の給付水準の底上げ」の部分が赤字で強調されていて、目を引きます。衆議院による修正部分だそうです。
今回の改正では「基礎年金の給付水準の底上げ」は見送られましたが、引き続き検討するようです。

サラリーマンは、原則、厚生年金の被保険者であると同時に国民年金の被保険者でもあります。年金の被保険者の区分が必ずしも理解されておらず、「基礎年金の底上げ」は、厚生年金保険というお釜に手を突っ込み、国民年金のお釜に飯を移し替えるというイメージを持たれてしまっている方も少なくない気がします。そう単純な話ではありません。丁寧な説明が必要でしょう。

今回、公的年金制度の見直しの中の被用者保険の適用拡大と在職老齢年金制度の見直しについて見ていきます。

被用者保険の適用拡大

被用者保険の適用拡大については、ほぼ見直し案の通りに成立したようです。

特定適用事業所の要件

要件現行改正
企業規模要件51人以上撤廃
労働時間要件週所定20時間以上維持
賃金要件月額8.8万円以上撤廃
学生要件適用除外維持

賃金要件

最低賃金が1,016円以上の地域では、週20時間働くと賃金要件を満たします。全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて、公布から3年以内の政令で定める日から賃金要件は撤廃されます。

企業規模要件

企業規模要件の撤廃は段階的に行われます。撤廃時期は下表の通りとなりました。企業規模は、常勤の従業員で判断します。社会保険の被保険者の人数ではありません。

企業規模(推計の該当者数)実施時期
35人以上(約10万人)2027年10月
21人以上(約15万人)2029年10月
11人以上(約20万人)2032年10月
10人以下(約25万人)2035年10月

健康保険、厚生年金保険の適用事業所について、常時5人以上の個人事業所の適用業種が拡大されます。

業種5人以上5人未満
法定17業種(※)適用適用外
上記以外の業種適用外→適用適用外

2029年10月の施行です。ただし、経過措置として、施行時に存在する事業所は当面期限を定めず適用除外となります。

また、被保険者への支援(就業調整を減らすための保険料調整)が3年間の時限措置で実施され、また、事業主への支援(キャリアアップ助成金)も検討されるようです。

在職老齢年金制度の見直し

在職老齢年金の支給停止基準を現行の50万円から62万円に引き上げます。(2027年4月施行)

在職老齢年金制度とは、賃金と老齢厚生年金の合計額が基準を超える場合に老齢厚生年金の支給を減らす仕組みのことです。令和7年度の「支給停止調整額」は、51万円でした。

働きながら厚生年金を受給しても、支給停止されづらくなります。