就業規則の懲戒処分規程はこう作る!実務で役立つポイント解説

今回は、就業規則の懲戒処分規程の作成ポイントについて書きます。

目次

  1. なぜ、就業規則を作成するのか
  2. 最低限あった方がいい規程
  3. 懲戒事由の分け方のパターン

なぜ、就業規則を作成するのか

就業規則作成の目的は何でしょうか。

常時10人以上の労働者を使用する事業主は、作成と労働基準監督署への届け出義務があります。違反者には30万円以下の罰金が科せられることもあります。

労働基準法の届け出義務を果たすために作成するのでしょうか。

それも理由の一つですが、一番の目的は、「問題社員などのリスクから会社を守る」、「社員が働きやすい環境を作る」ということだと思います。

これが就業規則の重要な役割なんだ、という認識がない社長もいます。
その結果、ひな形の就業規則や他社の就業規則を安易に流用して作成したり、作成したけれど社員へ周知しないといったことが起こります。

就業規則に規程してきちんと周知していないと、問題社員がいても懲戒処分ができないことになるのです。

また、賃金規程も就業規則の一部ですが、賃金規程がないと、遅刻早退の時や欠勤時に賃金をどのように控除するのか、といった実務面でも困ることになります。

最低限あった方がいい規程

就業規則の付属規程としては、

  • 賃金規程
  • 退職金規程
  • パートタイム就業規則
  • 有期契約社員就業規則
  • 嘱託就業規則
  • 育児介護休業規則
  • 国内出張旅費規程
  • 海外出張旅費規程
  • 慶弔見舞金規程
  • 出向規程
  • 個人情報保護規定
  • ハラスメント防止規定
  • 車両管理規定
  • 安全衛生管理規定

などがあります。

就業規則、賃金規程、育児介護休業規程の3つに分けるのが、一般的です。賃金規程、育児介護休業規程は、当初から分けた方が管理しやすいでしょう。
賃金規程は、法令順守及び評価と報酬の連動という両視点を考えると条項数が相当数にのぼることが多いです。
また、育児介護休業規程は法改正が多く、条項数も多い規程です。

その他の規程は、社員数の増加にあわせて、規程を増やしていけばよいでしょう。

社員が増えてきて例えばアルバイトなど雇用形態が複数でてきたら、その区分に応じて就業規則を作成するのが望ましいです。

懲戒事由の分け方のパターン

懲戒事由の分け方としては、

「懲戒事由と行為を紐づけるパターン」

と、「懲戒事由をグループ分けしないパターン」

があります。

「懲戒事由と行為を紐づけるパターン」

第○○条(譴責、減給、出勤停止、降格)

労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、譴責、減給、出勤停止、降格のいずれかの懲戒処分とする。
(1)
(2)

第○○条(論旨解雇、懲戒解雇)

労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、論旨解雇、懲戒解雇のいずれかの懲戒処分とする。
(1)
(2)

「懲戒事由をグループ分けしないパターン」

労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、第42条のいずれかの懲戒処分とする。また、譴責、減給、出勤停止、降格のいずれかの懲戒処分を受けたにもかかわらず、繰り返し(原則3回以上)会社から注意を受け、または懲戒処分を受けたときで、改悛の情が見られない場合には、論旨解雇または懲戒解雇とする。ただし、初めて懲戒処分を受ける場合であってもその行為が悪質または重大と会社が判断した場合には、論旨解雇もしくは懲戒解雇とする。
(1)
(2)

上のどちらかのパターンにしないといけないわけではありません。
しかし、実務上はグループ分けしないパターンの方が運用しやすいと考えます。

懲戒事由を紐づけるパターンだと、規定の作成段階から懲戒事由と行為の妥当性を考慮する必要がでてきます。

上の例では、繰り返しを原則3回以上と定義しているのも工夫の1つです。
実際に懲戒解雇にしたい場合に、内容にもよりますが一発で解雇というのは現実的にはリスクがあります。何回か、懲戒処分を重ねて、退職勧奨も前置してから、解雇とする方が現実的です。円満な労働契約の終了に向けて、懲戒処分や指導の記録を残すなど、それなりの準備が必要になります。
2回懲戒処分を受ければ、次は解雇かもしれないと従業員が考えれば、就業規則の規程が抑止の役割も果たします。

また、グループ分けしない方が、懲戒事由の条文の形容詞を減らせるという利点もあります。

懲戒事由の中に、「重大な」、「著しく」、「たびたび」などの形容詞が、ひな形就業規則にはよく見られます。
しかし、「重大な」とはどの程度のことなのか、「たびたび」とはどの程度の頻度なのか、が争いの原因になることもあります。

グループ分けのパターンで懲戒規程を作成すると、形容詞で処分内容の過重を行いがちになります。

今回は、就業規則の懲戒処分規程の作成ポイントについて書きました。参考にしていただければと思います。

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