賞与の社会保険料、所得税の計算方法

賞与、いわゆるボーナスの控除額の計算方法についてです。

賞与計算は支給額、いわゆる額面額の計算とその控除額の計算に分けられますが、ここでは控除額の計算について取り上げます。

賞与から控除するものについても、基本的には給与の場合と同じですが、住民税については賞与から控除することはありません。

また、法律で定められている源泉所得税などや社会保険料以外のものを、賞与から控除するためには、給与の場合と同様に労使協定が必要になります。

目次

  1. 健康保険料、厚生年金保険料の控除
  2. 雇用保険料
  3. 源泉所得税等

健康保険料、厚生年金保険料の控除

賞与から控除する健康保険料については、「標準賞与額×保険料率」の算式で計算します。

標準賞与額とは、賞与の金額の1,000円未満の端数を切り捨てた額で、年度(4月から翌3月)における上限が573万円となっています。

したがって、7月に400万円の賞与を支給する場合の標準賞与額は400万円ですが、12月に500万円の賞与を支給はする場合の標準賞与額は、7月の賞与と合算すると573万円を超えるため、173万円となります。

保険料率は、都道府県ごと、年度ごとに異なります。

例えば、東京都で令和7年3月分から令和8年2月までの場合、介護保険第2号被保険者に該当しない場合については1,000分の49.55、介護保険第2号被保険者に該当する場合については1,000分の57.5となっています。

退職月に賞与の支払いがある場合には注意が必要です。

例えば、6月10日に賞与を支給した被保険者が6月20日に退職したような場合、退職の翌日の6月21日が資格喪失日であるため、資格喪失月は6月となります。

保険料の負担は、資格喪失月の前月(5月分)までですから、賞与についても5月に支給する賞与は対象となりますが、6月支給の場合には保険料を控除しないことになります。

ただし、6月30日に退職した場合には、退職日の翌日である7月1日が資格喪失日となるため、その前月である6月支給の賞与から保険料を控除することになります。

また、産前産後休業中および育児休業中の賞与に対する健康保険料は、給与の場合と同様に免除されます。

ただし、育児休業中の免除は、当該賞与月の末日を含んだ連続した1ヶ月を超える育児休業等を取得した場合に限り、対象となります。

標準賞与額は、年度(4月から翌3月)の上限が573万円となっていますが、転職等があった場合には、保険者単位(全国健康保険協会管掌健康保険、各健康保険組合)でその累計額を算出します。

全国健康保険協会管掌健康保険で、同一年度内に転職等によって複数の被保険者期間があり、累計額が573万円を超えた場合には、「健康保険標準賞与額累計申出書」を年金事務所に提出します。

なお、転職等がなく被保険者期間が継続している場合には、573万円を超えても申出書の提出は不要です。

厚生年金保険料についても、健康保険の場合と同様に、「標準賞与額×保険料率」の算式で計算します。

標準賞与額とは、賞与の金額の1,000円未満の発生を切り捨てた額で、上限が1回あたり150万円となっています。

現在(令和7年9月以降)の保険料は1,000分の91.5です。

退職月の賞与の支払いについての注意事項は、健康保険料の場合と同様です。

産前産後休業中および育児休業中の賞与に対する厚生年金保険料についても、給与の場合と同様に免除されます。

雇用保険料

賞与から控除する雇用保険料の計算方法は、給与の場合と全く同じです。

したがって、賞与の額に業種の区分に応じた保険料率を乗じて計算します。

令和7年度の場合、「一般の事業」では1,000分の5.5を乗じ、「農林水産、清酒製造、建設業」の場合は1,000分の6.5を乗じて計算します。

源泉所得税等

賞与から控除する源泉所得税については、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて次の手順で計算します。

この表は税額を求める表ではなく、適用する税率を求める表ですので注意が必要です。

  1. 賞与の支給月の前月の給与等の金額から社会保険料等の金額を控除した額を計算します。(前月の給与計算で源泉徴収税額表に当てはめた金額です。)
  2. 扶養控除等申告書が提出されている場合には、甲欄の扶養親族等の数に応じた列、扶養控除等申告書の提出がない場合には、乙欄の列を決定します。
  3. その列の中から、1.で計算した前月の社会保険料等控除後の給与等の金額が該当する行を求めます。
  4. その行に記載された率が、賞与の金額に乗ずべき率となります。
  5. 賞与の額から社会保険料等(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)の額を控除した金額に、その率を乗じて計算した額が、源泉徴収税額となります。

前月の社会保険料等控除後の金額により、賞与の税率が変わってくるというのがポイントです。

よって、使用する給与計算ソフトによっては、賞与計算をする前に前月の給与データを確定(次月度へ更新)する必要があります。

今回は、 賞与の社会保険料、所得税の計算方法 について書きました。

正しく設定されていれば、給与計算ソフトが計算してくれますが、設定が正しいかどうかのチェックのためには、知っておきたいところです。

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