今回は、労働条件の変更についてです。

目次
- 合意による変更
- 就業規則による変更
- 就業規則の効力発生日
合意による変更
労働契約の内容の変更は、労働者と使用者の合意によることが原則です。
以下は、労働契約法(以下、労契法という)の条文です。
(労働契約の内容の変更)
e-gov 労働契約法より https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128#Mp-Ch_2-At_10
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
そして、裁判例では、労働契約の内容の変更についての個別合意の認定は、厳格になされる傾向にあります。
例えば、勤務地変更を伴う異動により、それまでの休日が土日祝であったものが、土日に変更される場合、合意が必要ということです。
当然かもしれませんが、労使ともに意外と意識せずにやっていないでしょうか。
会社員も知っておいてほしいです。
そんな場面に出くわしたら穏やかに言いましょう、「合意が必要ですよ」と。
就業規則による変更
一旦、就業規則を定めて統一的な労働条件が確立した後に、その労働条件について、就業規則を変更することによって、これを変更することができるのでしょうか。
この点については、労働契約成立の合意原則に立ち返って考えるならば、労使の合意があればその変更も可能ということになります。(労契法8条)
ここでいう変更には、従業員にとって不利益な変更も含まれますし、場合によっては、就業規則そのものの変更も含みます。
これには、労契法9条、10条に規定があります。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
e-gov 労働契約法より https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128#Mp-Ch_2-At_10
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
つまり、変更後の就業規則を周知させ、就業規則の変更が合理的なものである時は可能としています。
しかし、この合理性は、次の5つの要素が要求され、要求水準が高いものになっています。
- 労働者の受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合等との交渉の状況
- その他の就業規則の変更に係る事情
また、周知についても、変更があることを知っているだけでは足りず、変更の内容をきちんと理解させる必要もあると言われています。
特に、賃金に関わる不利益変更の場合は、説明会を開き、変更後の内容を記載した書面を配布し、具体的な算定根拠や金額などを明らかにしておかないと、いざ裁判になった場合は、多くのケースで会社側が敗訴しているようです。
就業規則の効力発生日
常時10人未満の従業員を使用する会社であっても、就業規則を作成した場合、周知があれば労契法で言う就業規則に該当します。
労働基準法で言う就業規則としても扱われ、労働基準法91条(制裁規定の制限)、同法92条(法令及び労働協約との関係)及び同法93条(労働契約との関係)の適用があるものとされています。
加えて、労契法7条の労働契約規律効、同法10条の合理的変更の労働契約の規律効、同法12条の最低基準法の効力も認められます。
第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
e-gov 労働契約法より https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128#Mp-Ch_2-At_10
(就業規則違反の労働契約)
e-gov 労働契約法より https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128#Mp-Ch_2-At_10
第十二条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
では、周知のあった就業規則について、従業員数が10人未満であるため届け出がなかった場合、その効力はどうなるのでしょうか。
基本的に、行政官庁への届け出のあった日をもって、就業規則の効力発生の時期と考えることは適当でないとされています。
効力発生時期については、労働基準法に規定する方法に限るかどうかは別として、何らかの方法による周知がなされた時とする考えが主流です。
すなわち、就業規則の効力発生の時期は、就業規則が何らかの方法で労働者に周知された時期以後で、当該就業規則に施行期日として定められた日と解されます。
また、就業規則中に施行期日の定めがない時は、通常は周知された時と解されます。
就業規則による労働条件の不利益変更はできなくはないが、周知と合理性が必要で、ともにハードルが高いということが分かると思います。
最初に作成して周知させる就業規則は、とても大切だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
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