今回は、健康保険の給付でよく申請する給付の1つである傷病手当金についてです。
その中でも、 傷病手当金の給付要件、事業主証明欄、療養担当者の記入欄について その実務上の留意点を書きます。

目次
- 給付要件
- 事業主の証明欄
- 療養担当者の証明欄
給付要件
傷病手当金の申請の手続きには、会社が行う手続きと本人が行う手続き、両方ともにあります。
会社が行う手続き
病気や怪我により休業する報告を本人から受けたときに、傷病手当金の申請の有無の意思確認をします。
または、病気や怪我により休業することになり、本人から傷病手当金の申請をしたい旨の連絡を受けたら、本人に必要な申請書を渡し、本人記入欄、療養担当者記入欄を埋めてもらうように依頼します。
本人から必要事項を記載された申請書を受け取ったら、事業主記入欄を会社側で記載し、会社が協会けんぽまたは健康保険組合に送付し、振り込みを待つ流れとなります。
本人が行う手続き
本人が行う手続きとしては、申請書の本人記入欄の記入と、療養担当者に証明をもらうことが挙げられます。
健康保険証の記号と番号を記載する必要があります。
また、療養担当者から証明をもらうときの費用は本人が負担します。
給付要件について
(1)待機期間と支給(申請)期間の取り方の実務上の留意点
一般的に、初診日から療養のため労務に服し得ない状態が連続して3日間経過することで、待機期間は完成します。
この労務に服し得ない日には、公休日及び有給休暇取得日も含まれるとされています。
(2)支給額
1日あたり、「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額の平均額」÷30日×2/3
ただし、勤続年数が1年に満たない場合、計算式のうち支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額が求められないため、次のうちいずれか低い額を用いて計算することになります。
ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
イ 当該年度の前年度9月30日における加入先の健康保険の全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(協会けんぽの場合、2025年度は32万円)。
(3)初診日前は病院へ行かず、売薬で自宅静養していたなどの場合
原則として、ほぼ認められることはありません。
ただし、状況次第によっては認められるケースもありますが、その場合は添付書類⑤「生活・療養状況について」様式が必要になります。
(4)資格取得直後、原則として1ヵ月以内の申請の場合(出産手当金も同様)
例 資格取得日:令和8年2月15日、申請期間:令和8年3月4日から3月21日。
この2つの日付間が1ヵ月以内に接近している。
添付書類④「取得接近調査書」様式。
この場合、保険者側から見れば、逆選択(健康保険の給付を受けたいために資格取得すること)に該当すると判断されるため、添付書類の提出が必要となります。
(5)必要となる添付書類
現在は、原則として添付書類は不要となっています。
平成28年3月以前は、以下の書類の添付が必要でした。
①賃金台帳(又は給与明細書):支給開始日の属する月の前月分から
②出勤簿(又はタイムカード):支給開始日の属する月の前月分から
③取締役会議事録:社長等で賃金台帳、出勤簿がない場合に代用
④「取得接近調査書」様式:資格取得後間もない給付金申請の場合のみ
⑤「生活・療養状況について」様式
※③から⑤については、被保険者が一定条件に該当する場合の特例的な添付書類。
(6)押印の省略
ほぼすべての書類で押印の省略が進められていますが、証明者としての責任は変わりません。
(7)令和4年1月より傷病手当金の通算化が開始
同一の怪我や病気による傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6ヶ月に達する日まで対象となり、支給期間中に途中で就労するなど傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6ヶ月を超えても繰り越して支給可能となりました。
事業主の証明欄
(1)給与の締め切り日と支払い日の確定(欠勤控除額精算の時期の確定)
(2)給与支給・内容の確認
申請書への添付は不要となっていますが、賃金台帳、出勤簿の入手、確認は必要です。
(3)欠勤控除の算出方法はどうなっているか。
給与マスターの確認。
(4)有給休暇取得日以外で全額支給されている手当がないか。
問題となりそうな代表的な手当は、通勤手当(賃金台帳に載っていないものも含みます)、住宅手当、家族手当などです。
6ヶ月定期券代で通勤手当を支払っている場合、事業主記入欄の賃金内訳の単価の欄には6ヶ月分全額を記入します。
(5)保険者が支給額の一部控除を行う場合の計算は、会社から支給された金額を30で除した金額を控除します。
会社の就業規則で定める賃金控除の計算方法と異なる場合があります。






療養担当者の証明欄

(1)特に療養担当者の意見記入欄の日付関係には注意する必要があります。
⚫医師意見書の不備、空欄をチェック
例1 負傷の場合の負傷年月日:初回のみ記載ありや空欄はNG
例2 初診日(療養の給付開始年月日):初回のみ記載ありや空欄はNG
例3 労務不能と認めた期間、証明日付は毎回必須
例4 入院の場合:入院期間、診療実日数、診療日の3つのうちいずれかでOK
例5 通院の場合:診療実日数、診療日の2つのうちいずれかでOK
例6 診療実日数0日は、OK。ただし空欄は注意。
⚫︎初診日(療養の給付開始年月日)、証明日、労務不能期間の3者間の整合性
例7 初回の労務不能(申請)期間が証明日の日付よりあとの日付に食い込んでいるのは、NG。
初回の労務不能(申請)期間:令和8年3月4日から3月21日、証明日:令和8年3月19日。
例8 初診日より以前の日付から初回の労務不能(申請)期間が始まっているのは、NG。
初回の労務不能(申請)期間:令和8年3月1日から3月21日、初診日:令和8年3月4日。
(2)記載内容が転医である場合、新しい病院は療養の給付が開始された年月日からのみ、労務不能の期間について証明を行うのが原則です。
この場合に、転医前の病院と転医後の病院の証明期間に空白がなければ問題ないのですが、もし退職後の傷病手当金継続給付受給中で期間の空白があった場合は、その時点で継続給付が終了することになり、トラブルの要因となることがあります。
この場合、協会けんぽでは申立書(任意書式も可)を提出させ、空白期間に合理性があるかどうかで判断を行うこととされています。
(3)メンタルヘルス系の疾患による傷病手当金の場合、職場復帰の際にリハビリ勤務として、医師の指示または許可のもと、半日出勤で従前の業務につくケースがありますが、この期間は労務不能期間とみなされないので注意が必要です。
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