労災保険の療養(補償)等給付の手続上の留意点

労災保険の療養(補償)等給付の手続上の留意点 についてです。

目次

  1. 説明が必要
  2. 労災請求書について
  3. その他

説明が必要

業務災害、通勤災害を被った被災労働者に対しての療養は、労災指定医療機関等に自己負担なしで行われるのが原則です。

健康保険等で受診してしまっても、労災保険扱いへの切り替えはできますが、事務手続きが煩雑になります。

被災労働者については、できるだけ労災指定病院等に受診するよう、健康保険証を示して受診しないように注意しなければなりません。

災害発生や負傷後すぐに医療機関に行った際に、所定の労災請求書を持参できないことも多いと思います。

この場合、医療機関の窓口にて、労災事故であること、労災扱いで処理を行うことを申し出て、次回受診日に労災請求書を持参する旨の説明が必要です。

労災の場合、傷病の後、解雇や任意退職により労働者としての地位を失ったとしても、労災補償を受ける権利は変更されません。

変更されないとは、労災補償を受ける権利が消滅したり、給付額等の内容が変わったりすることはないという意味です。

療養(補償)等給付、休業(補償)等給付等が退職によって打ち切られることはないということを意味します。

労災請求書について

請求する保険給付の種別に合った請求書を提出しなければなりません。

各請求書は、厚生労働省ホームページの主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)からダウンロードすることができます。

療養(補償)等給付の請求書の種別は以下の表のようになります。

療養(補償)等給付とは、

療養補償給付
複数事業労働者療養給付
療養給付

の3つを指します。

「補償」と付くのは業務災害を、「補償」の文字が付かないものは通勤災害を指します。

業務災害は、労働基準法上の災害補償の義務があるがあるから「補償」とつき、通勤災害は労働基準法上の災害補償の義務はないので、「補償」の文字がつかないと考えるとイメージしやすいと思います。

給付理由請求書種別
業務災害または通勤災害により療養する場合(労災指定病院等)(業務災害)様式第5号
(通勤災害)様式第16号の3
業務災害または通勤災害により療養する場合(労災指定病院等以外(業務災害)様式第7号(1)
(通勤災害)様式第16号の5(1)
※薬局、柔整等の種別注意
転医の場合(労災指定病院等から労災指定病院等へ)の場合(業務災害)様式第6号
(通勤災害)様式第16号の4

特に、労災指定医療機関等にかからなかった場合、看護や移送した場合の療養の費用の請求に当たって使用する様式第7号(通勤災害の場合は様式第16号)については、病院(1)、薬局(2)、柔整(3)、はり・きゅう(4)、訪問看護(5)の種別によって請求書が異なります。

処方箋によって医療機関以外の薬局から薬を提供される場合、当該薬局に対しても労災請求書の提出が必要です。

療養継続中での転院は可能ですが、転院に当たっての手続きには別途請求書が必要です。

労災指定病院等から他の労災指定病院等への転医の場合、転医先へ請求書(様式第6号、第16号の4)を提出します。

労災指定病院以外から労災指定病院等への転医の場合、転医先へ請求書(様式第5号、第16号の3)を提出します。

その他

通院費(移送費)が支給されるのは、傷病労働者の住居地または勤務地から片道2km以上の通院に限られています。

柔道整復師の施術を受けた場合、労災指定医療機関と同じような取り扱い(受任者払い制度)が設けられています。

療養の過程において、費用を負担した治療用材料および装具についての費用は、労災保険から支給されるものと支給されないものがあるので、請求に当たっては事前に労働基準監督署へ確認を行った方が良いです。

また、療養の費用の請求に当たっては、添付書類が必要な場合があります。

今回は、 労災保険の療養(補償)等給付の手続上の留意点 について書きました。

労災事故は、どんなに気を付けても起きるときは起きます。

また、会社の施設内で「勝手に従業員がこけた」としても、労働基準法における災害補償責任は事業主にあります。

適正な事務処理の参考となれば幸いです。

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